不法侵入!11「生蒸し暑い朝!」
なんとか理性は無事に保てたのかわからないが、異臭の充満する家の中で2日間を無事とうげを超える事が出来た正幸はすっかり夏ばれに晴れた3日目の朝、早足で着がえてリュック1つに玄関の土間にある自転車を引き出し死に顔を見せるように出ていった。なんかもう、玄関に鍵をかう気力さえなかった!
新鮮な空気といっていいか自信がないが、既にお日様の日差しは早朝とは思えないほど蒸し暑かった。
砂利道のいたる所に大きな水たまりが出来ていたが、正幸はお構いなしにその上を白い靴でびしゃびしゃと気にせず、踏んでいった。
いつものように急な坂を自転車を押して下っていると、途中の一軒家の前に近所のおばさんらしき二人の会話が耳に届いてきた。
おばさんA「ほんと、久しぶりだったね!こんな雨!家が流されるかと思ったわ!」
おばさんB「滝みたいだったもんね!あたし怖くて全然寝付けなかったもん!主人は呑気にテレビみてたけど…!あたしはだめ!もう、パニックで三途の川見えはじめてたもん!」
おばさんA「それは大げさでしょあんた!(笑)」
おばさんB「それになんかこの辺、警報も出とったらしいけど夜中だったからちっとも分からなかった!あんな雷の雨の中、出てったらそれこそ危ないわ!昨日もしつこかったしね!スーパー買い物しといた後でよかったわ!」
おばさんA「ほんと…!でもうちらは坂の上だからまだ、いいほうでしょ!被害もほとんどなかったし!駅の方なんかすごい水浸しになったみたいよ!電車いくつか遅れたみたいだし!家の中まで水浸しになって公民館に避難した人多いみたい…!」
おばさんB「それ、えらいことじゃないの…!?」
正幸はうつろな目で二人のそんな会話を横目で流し聞きしながら早足で通り過ぎる。まる二日間ほとんど水(トイレのタンクの…!)だけでご飯を口に入れていなくしかも寝不足でふらふらで早くバイト先のコンビニに行きたかった。